大江慎也の逆襲2 Things're being tough

「一度きり、一度きりだと思って、私はステージングをしていた。(略)時々手指をしきりに動かしていたのは、自分の指先から鋭い光線が発せられているという錯覚じみたことをリアルに感じていたからだった。(略)歌わずとも頭脳からのテレパシーのごときものが観客に伝わり、歌を感じ取って、私と一緒に歌ってると考えながら、口と身体だけを動かしていた(略)ステージを途中で中断し、舞台横に行った私は当時のマネージャーに襟元を掴まれた。」『en-taxi』 WINTER 2008 VOL.20掲載「STORIED」より
「上半身裸になりステージをしていたら、声を振り絞っても歌えなくなった。思考と視覚が重なって発声できない状態になってしまった。」
ここに表現された状態は、彼のはらんんだ妄想というものがどんなものかよく現している。「思考と視覚」の重なり、自分の思考がそのまま視覚という空間把握へつながってしまっている状態をうまく捕まえた言葉だ。

私はここで心的異常論をものするつもりもないので、さらっと流すが、バンドの中心がこのような異常のまっただ中にあり、しかも周りの人間はそれを客観視して対策をとれなかったのか、といっても詮無きことかもしれない。20代のメンバー達、メンバーそれぞれの思惑、生活。先入観でかためられた当時の病についての医師の態度と今程進んでいない抗精神剤。大江にとってそれは出口のない空間(死以外)であり、時間感覚と空間感覚のずれ、同化という異常に取り囲まれ、存在を崩壊させかねないものであったはずだ。

しかし、そんなステージングはカリスマと呼ばれるようになった大江慎也にとって不幸か幸運であるかなど関係なく、おこなわれた。それが興行、芸能の世界だからだ。

テーマ : ロック - ジャンル : 音楽

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